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「家族の安全を守るマイホーム」
この言葉には地震などの災害から家族を守る、そして犯罪から家族を守るという2つの意味があります。
平屋の住宅は2階建てと比べて耐震性が高い反面、防犯性は低く、空き巣被害に遭いやすいと言われています。
実際に自称侵入犯に至っては、平屋個人宅での侵入盗が最もやりやすいと回答しているデータが存在するほどです。
空き巣被害に遭いやすい家とは? :: リフォーム産業新聞
そのため、しっかりとした防犯対策なしに「家族を犯罪から守る家」として建てることはできません。
今回は平屋が防犯に弱い理由や、防犯対策についてお伝えします。
実際に被害に遭った時を想定して、保険の補償についてもチェックしていきます。
なぜ防犯に弱いと言われるのか
平屋が防犯に弱いと言われている理由は、大きく3つあります。
- 侵入しやすい窓の高さ
- 敷地内に死角ができやすい
- 立地
それぞれ解説します。
侵入しやすい窓の高さ
平屋はすべての窓が1階にあるため、常に侵入されるリスクを抱えています。
窓が多ければ家の中の状況も確認しやすくなるため、採光との兼ね合いに悩むことになります。
寝室の窓から中の様子が確認できたとしたら、寝ている時間をチェックして家の中へ侵入してくる可能性もあるわけです。
また、全部屋の様子を確認できる間取りだと、不在かどうかをすぐに判断することができます。
一般的に平屋は下調べがしやすく、侵入経路も多いため狙われやすいと言われているのです。
敷地内に死角ができやすい
平屋は次のような理由により、敷地内に死角ができやすくなります。
- 長細い建物形状になることが多い
- 目線を遮るためにクローズ外構にすることが多い
建物が長細い場合、奥まった建物裏などは道路からほとんど見えません。
死角があるほど侵入に周囲から気づかれにくいため、狙われやすい家と認識されてしまうリスクがあります。
平屋はプライベート空間も全て1階部分に配置するため、道路からの目線を気にしてクローズ外構を採用するケースも多い傾向です。
クローズ外構とは、目隠しフェンスなどを施工して、道路と敷地内を隔てている外構のことです。
この外構は、目線が遮られるので庭や室内のプライバシーを守ることができますが、一方では侵入の手助けにもなってしまうのです。
平屋の外構は、家族のプライバシーと防犯性のバランスを取ることがプランニングのキモとなります。
立地次第で大きく影響する
平屋を建てるには比較的広めの土地が必要です。
そのため住宅街では適切な土地が見つかり辛く、人通りが少ない、さらに隣家との距離がある広々とした土地が好まれます。
人通りの少ない土地は、下見や侵入の際に人目につきにくいですし、隣家との距離があると、不審な人物の侵入で物音が立っても気付かれにくいことも想定されます。
ゆえに空き巣のターゲットにされやすいリスクがあるのです。
では人通りが多い土地が良いかと言われると、そうとも言い切れない部分があります。
人通りが多いと周囲への意識が薄れ、見知らぬ人物が長時間に渡って下見をしていても怪しまれにくい環境であるとも言えるのです。
周辺環境が賑やかだと、多少の物音なら不審に思わないため、適度に人通りがあるような土地は狙われにくいとも言えます。
平屋向けの土地を購入するときは、広さと人通りのバランスを見ると良いです。
具体的な防犯対策の例
平屋を建てるときに実践してほしい防犯対策を紹介します。
窓や玄関ドアの防犯性を上げる
不審者においては、家の窓から侵入を試みることがほとんどのため、窓の防犯性を上げることが大切です。
参考:侵入窃盗の傾向と防犯対策~警察庁発表の統計データより~|ALSOK
具体的には次のような窓を採用してください。
日中の防犯対策も考えるなら防犯ガラスがおすすめです。
玄関ドアに対しても防犯性の高い物にします。
- 玄関ドア:ダブルロックのディンプルキー、ガラス面積の少ないドア
10分以上のピッキングにも耐えられるディンプルキーの採用は必須です。
なぜならば、空き巣被害の約半数が鍵の閉め忘れた窓からの侵入だからです。
参考:泥棒の心理を理解して空き巣を防ぐ|ALSOK
窓の開け閉めを頻繁にする方は、窓を閉めたら自動ロックされるようなアイテムを後付けで採用してもいいでしょう。
窓の幅や施工する高さを工夫する
窓の防犯性の強化だけでなく、窓の幅や施工の高さにも注意して設計します。
一般体型の大人では、窓ガラス部分の幅が15cm以下だと侵入が難しいと言われています。
そのため、大きな窓が必要でない空間は、この大きさの窓を選びましょう。
細くても複数個並べて施工すれば、採光は十分に確保できます。
ガラス部分は15cm以下ですが、実際のサッシサイズは20cm台のものです。
ガラスのサイズは採用するメーカーによって異なりますので、設計士に確認してください。
高めの位置に窓をつけることで、防犯対策につながり、人の手がかからないような位置に窓を施工すると効果的です。
ただし、窓の近くに物置やエアコン室外機などがあると、足場にされて侵入される可能性があるため、屋外の設備関係の配置も考慮しましょう。
外構にセンサーライトや砂利を採用する
狙われにくい家にするには、外構に目を向けることも大切です。
道路と敷地の境界にフェンスを設けないオープン外構にして、視界を良好にさせましょう。
クローズ外構にしたい場合は、敷地内の死角になる箇所を中心に、センサーライトや砂利を敷くことで防犯性は高まります。
センサーライトは光、砂利は歩くときの音で、不審者の侵入を知らせてくれるでしょう。
被害を防ぐプランニングとは
自宅への侵入被害を防ぐためには、プランニングの工夫も重要です。
狙われにくい間取りのポイントを説明します。
建物の凹凸をなるべく減らす
道路からの死角を少なくするために、建物の凹凸をなるべく減らすことがポイントです。
家への侵入に時間がかかると判断されると、建物の陰に隠れられる凹凸が多くて道路から死角になる家は、狙われやすいのです。
正方形や長方形に近い形状では、建物の影に隠れるスペースが少なく、未然に侵入を防ぐ可能性が高まります。
そのため視界良好な土地や建物は、防犯上のメリットとなります。
このような家は、建物の裏側一方向だけ防犯対策しておけば狙われにくいため、防犯対策の費用もかかりにくいです。
LDKを中心に居室がつながる間取りにする
平屋の防犯性を高めるなら、LDKを中心に各居室とつながりがある間取りをおすすめします。
理由は次の2つです。
- 廊下を無くすことで各居室の物音や異変に気付きやすい
- ドアを開放することで各居室の様子がわかりにくくなる
廊下で区切られた間取りは空間ごとに距離があるため異変に気付きにくいため、LDKから各居室がつながっていれば、物音や異変を感じ取りやすくなります。
ドアの開放で様子がわかりにくくなるというのは、不思議な印象を持たれるかもしれませんが、ドアの開放によって窓から光や話声が漏れます。
ゆえに人がいるのかどうか判断が難しく、狙われにくい状況を作り出せるのです。
デメリットとしては家族間のプライバシーが守られにくいことですので、プランニングの際は十分に検討してみてください。
建物に囲まれた中庭を作る
庭や外に干した洗濯物を見られたくないなら、クローズ外構ではなく中庭のある平屋が最適です。
建物に囲まれている中庭は、外から見られることがないため、プライバシーが守られた庭や物干し空間が実現できます。
さらにオープン外構が可能ならば、見通しが良いため狙われにくくなります。
洗濯物を干しているか取り込んでいるかで、在宅を見極める不審者もいるため、外からは全く見えない中庭を作るのは、防犯上も機能的なのです。
空き巣被害をカバーする方法
防犯対策をお伝えしましたが、実際に被害に合ったときの知識を蓄えておくことも大切です。
空き巣被害を受けてしまったときは、保険の対象になるのでしょうか。
空き巣被害は火災保険で補償
空き巣被害を受けたとき、総合タイプの火災保険に加入していれば補償されることがほとんどです。
最近では火災以外に、風災・落雷・盗難などの広範囲の補償内容がついた保険が多いため、基本的には補償されると思っていいでしょう。
空き巣によって窓やドアが壊された場合は、火災保険の盗難による「建物の損害」に対する保障が適用になります。
また、空き巣に家財を盗まれた場合、盗難という扱いで家財保険が適用されます。
火災保険に加入するほとんどの方が家財保険にも加入しますが、必須ではありません。
保険料を抑えようとして家財保険に加入しないと、盗難品に対する補償は一切なくなってしまいます。
家財保険にも忘れずに加入し、自分の家財に適した保険金額を掛けるように注意しましょう。
現金・貴金属・高級バッグは?
現金・貴金属・高級バッグなどを盗まれてしまったとき、家財保険の対象となるのでしょうか。
基本的にはこれらも家財保険の範囲内で補償されます。
しかし、保険内容によっては現金の全額は戻ってこないこともあります。
また貴金属や高級バッグは、盗まれたという証拠がなければ保険金が支払われないことがあります。
確実に補償を受けるために、品物を購入したら領収証や証明書と合わせて写真を撮っておくなどの対策が有効です。
さらに、自己負担額が設定された家財保険に加入していると、補償額は実損額よりも少なくなります。
保険会社によって内容は異なりますので、契約前に盗難に対する補償範囲をしっかり確認すると良いです。
【本章の参考】
空き巣による盗難被害などの補償|ソニー損保の新ネット火災保険
個人用火災総合保険『THE すまいの保険』 | 【公式】損保ジャパン
まとめ
平屋は2階建て以上の建物に比べて、空き巣被害に合うことが多いです。
しかし、プランニングや外構計画、採用する設備などの防犯対策をすることで、狙われにくい家にすることは十分に可能です。
また、空き巣の被害に合ってしまっても、適切な火災・家財保険に加入していれば補償を受けることができます。
受け取れる額や補償範囲は保険会社によって異なりますので、契約前に細かく確認してください。
「建物・外構・保険」の3つすべてに対して防犯対策を行い、家族の安全を守る家づくりをしましょう。